統計の時間軸が元号? NHKはなぜそこまで元号にこだわるのか

2020年4月29日水曜日

国内海外の使い分け 生活の中で

元号を時間軸にした72年間に渡るグラフ

 以下は2019年12月25日NHK朝7時のニュース内の画像です。
少子化の推移を元号で示したフリップの写真


棒グラフの拡大写真

「国予測より2年早い 少子化のスピード想定上回る」
というニュースですが、目を引かれたのは、その変化を示すグラフの時間軸が、昭和22年~令和元年と元号表示になっていたことでした。
 いや、昭和60年も、平成10年も実在した年なのだから、そのように表示したとして何の問題があるのか、虚偽を描いているわけではない、という意見があるかもしれません。
 しかし、途中に「元年」という表示が2回も入り、3つのリセットされる数字で時間軸を示しているのですから、これが72年間の変化を示すものであることは、人間だろうとパソコンだろうと一旦全期間を別のリセットされない数字に変換した上でなければ理解できません。そんな時間軸のグラフを作成したら、小学校の算数のテストでは「減点」、ではないでしょうか。
 このような追加行程を経なければ理解されないグラフでもいいではないかという考えに対しては、では、それらの追加行程無しで理解できるグラフをなぜ作らないのか、作ってはいけないのか、と質問しなくてはならないでしょう。そしてどちらが良いのか、そう考える根拠は、と自らの考え方を検証すべきなのです。

 最近のNHKのニュースでは以下のような傾向にあると観察されます。
 ①国内の事象は必ず元号で表示する。
 ②外国の事象は西暦で表示する。
 ③一つのニュースの中でそれが混在しても頓着しない。
 このようなことがまかり通るのは、何らかの指示によるものだと推測するのが合理的です。
 1947年~2019年まで、72年間に及ぶ出生数の変化について、時間軸を途中でリセットされる数字で示し、それを堂々と放送する(せざるを得ない?)というのは、合理性が疎外される何らかの力がそこでは働いていると考えるしかありません。

日本経済新聞の場合

 ちなみに日本経済新聞電子版は同じことを次の見出しで伝えています。もちろん西暦です。

出生数86万人に急減、初の90万人割れ 19年推計

2019/12/24 14:35 (2019/12/24 15:00更新)

 その中のNHKと同じことを表現するグラフは以下のとおりでした。
西暦表記による日経新聞のグラフの画像
 時間軸はあたりまえですが、西暦です。もし、日本経済新聞がこれをNHKと同じように元号を時間軸とする図で掲載してしまったら、読者のビジネスパーソンからは、いい加減にしろと抗議が殺到するでしょう。

厚労省の発表はどうだったのか

 では、この情報の発信元である厚労省はどのような資料を記者たちに配ったのでしょうか。
令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の概況
によると以下の様なEXCELのグラフが提供されたようです。

厚労省の発表資料によるグラフ
時間軸については元号と西暦の併記になっています。元号を「慣習・慣行」として使用するという政府の方針下で合理的であろうとすればこの「併記」がもっとも簡単な解決法なのでしょう。
 この厚労省の広報資料から、なぜ、NHKは西暦を外し、元号のみでのグラフを放送することになったのか? これは直接NHKの考えを尋ねるしかなさそうです。NHKの受信料を支払う視聴者としては、こうした時間変化を示すグラフを理解しやすくするためには時間軸には連続する数字である西暦を入れるようにするのが当然ではありませんか?、とお願いすることになります。

総理府統計局の場合

 なお、政府機関である総務省統計局が毎月公開している、全国人口の推移 2019-12-20 公開、では以下の様な表になっています。

総務省統計局の人口推移の表の画像

 当然のことながら、時間軸の年月は連続性を保てる西暦で表示されており、元号のみ使用のNHKの異様さがはっきりします。また、この表の項目に英文が併記されていることからもわかるように、これらの統計資料は世界の共有物でもあり、海外からのアクセスにも耐えられる水準を前提にしているとおもわれます。
 もちろん、日本政府機関のアイデンティティとして?、それらの統計表を更新したという記事自体は、更新日の記載に元号のみを使い、統計の名称も毎月の更新の場合は元号のみ表示です。かろうじて年度にかかわるものは西暦が入っていました。
人口推計 更新履歴一覧の画面コピー

 なお、総理府統計局のHPとは別立ての、政府統計の総合窓口 e-Stat ではもっと徹底していて、元号は全く出てきません。僅かに日本語ページで(海外からのアクセスを前提に英語ページも当然完備)、データの元になった調査の名称に元号が使われているのみです。
 このように、純粋に統計データ、あるいは海外から見られるもの、という条件を加えると、元号は急にお払い箱になってしまいます。ちょうど、生年月日や発行年月日は必ず元号で記載する日本政府なのに、海外で使われることが前提のパスポートの場合には、元号などおくびにもださず、だまってすべて西暦で統一しているように。
 これらの事からわかることは、現在の日本では、元号使用の意味についてなぜそれを使うのか、きちんとした議論が行われず、曖昧なままやり過ごしている、という事です。