年金事務は電子媒体作成時の指定という形で元号を強制している。

2020年5月10日日曜日

政府の対応 生活の中で

年金関係の書類を受け取ると、それらは何十年にも及ぶ期間についての書類であるのに、元号だけで表記されていて、直感的に理解できない不合理を私たちは強いられています。
その大本には年金事務を元号のみで申請、処理させる仕組みがあります。

https://www.nenkin.go.jp/denshibenri/program/download.files/specs01.pdf (現在はホームページ構成と版が更新されたためリンク切れ。)
https://www.nenkin.go.jp/denshibenri/program/20210401.html から最新版に入って下さい:2023/2/22。)

令和 2年 4月(第11.2版)電子媒体届書作成仕様書 (CD/DVD仕様書)CSV形式届書作成仕様書(電子申請)(健康保険・厚生年金保険適用関係届書)厚 生 労 働 省 日 本 年 金 機 構

という事務処理の仕様書を見てみます。

本書は、日本年金機構事務センター(年金事務所)(以下「年金事務所」という。)、健康保険組合、厚生年金基金に「紙」で提出している以下の届出内容を媒体に収録する方法を規定するものである。

以下の3種類の提出先について規定する。
(1)年金事務所提出
(2)健康保険組合提出
(3)厚生年金基金提出

事業所が1事業所分の届出内容を作成する場合は、1章から4章の記載内容に従い、社会保険労務士が複数事業所分の届出内容を作成する場合は、1章から4章に加えて5章の記載内容に従うこととする。

その中で年金事務所提出の場合をみると元号と西暦は次のように扱われています。(健保組合、厚生年金基金への提出の場合も基本的に同じです。)

①CDやDVDて提出する場合、媒体のケースには作成年月日を元号で記入するよう指定されています。
ラベル記載内容を示す表
 ページ 1.2-2

②CDやDVD内の媒体管理レコードについては、4項の識別コードのあと、第5項として、作成年月日を 西暦8文字で入れるように指定されています。
 ページ 4.1-3

③実際の各人のレコードで、生年月日については、元号のみの選択と、それぞれの元号での年月日の入力を指定されています。
ページ 4.5-3

④資格取得年月日についても元号の選択とそれぞれの元号での年月日の入力を指定されます。
ページ 4.5-5

元号と西暦の指定が入り乱れているように見えますが、要するに、
個人に関するデータは元号で入力させた上で、システム内では西暦に変換して処理
②個人とは関係なく直接目に見えない媒体作成日時はそのような迂回をせず、最初から便利な西暦を指定して入力させる
③電子的な処理には関係無いが個人が目にするケースのラベルは元号を直に書かせる
という方針のようです。
これは、システム内では当然西暦を使っている(使わざるを得ない)にもかかわらず、「個人の生」には元号をどうしても焼き付けたい、という思想で貫徹された事による結果、だと理解されます。

そして、紙であれば、印刷された元号を消して西暦に書き換えての申請も可能でしょうが、電子申請のフォーマットとして元号のみでの入力をこのように指定している以上、従来政府が主張してきた、「元号が令和に改められても,国民は,元号の使用について強制されるものではなく,元号,西暦を自由に使い分けることができるものである(2019年の元号差止請求裁判での2019年9月2日付けの国側準備書面より)」という主張は虚偽であることをはっきり示していると考えます。政府の主張をこれからも通すつもりならば、すべての電子申請に関しても日付の選択肢に「西暦」を加えなくてはなりません。