「公的機関への電子申請における元号使用強制等に関する質問主意書」回答不能。日本社会の紀年法については国会での議論が必至。

2024年6月11日火曜日

運動 国会へ 政府の対応

 5月22日に日本共産党の宮本徹衆議院議員から提出された「公的機関への電子申請における元号使用強制等に関する質問主意書」に対する回答が5月31日に届きました。


以下衆議院へのリンクhttps://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b213099.htm


 内容は、わずか数日での回答に見合った「回答回避」の文章でしかありませんでしたが、《日本年金機構の電子申請プログラムではプルダウンメニューで西暦は入力できないこと》、《政府は元号でも西暦でも申請を受け付けるという元号法以来の立場を堅持していること》、の2点は、はっきり確認していました。

 ところが、それなら、「年金機構の電子申請プログラムの西暦では入力できないという現状」は「政府の立場に反しているのではないか」、という質問書の最大の焦点については、官僚用語を駆使して、回答を回避して終わっていました。

 このことは、今後この問題について言い逃れが出来ないような場所で議論が必要であり、日本社会における「紀年法」について、立法府である国会での議論が必至であることを示しています。

 以下に、質問主意書とその回答、簡単なコメントを掲載します。


公的機関への電子申請における元号使用強制等に関する質問主意書

衆議院宮本徹議員2024/5/22提出。5/31回答

 

一 政府は「元号法」(一九七九年制定)の審議過程において、「この法案は、一般国民に元号の使用を義務づけておるわけではございません。(中略)この法律には、西暦使用については何ら制限をいたしておらないわけでございまして(中略)。この法案には、元号の使用を官公庁において義務づけた規定はございません。(中略)一般国民の公の機関に提出する申請書でございまするとか届け出書でございまするとかいうものにつきましては、(中略)西暦でどうしても記入して手続をしたいと言われる方については、西暦で受理するということになると思うわけでございます」(一九七九年三月十六日、第八十七回国会、衆議院本会議、元号法審議での三原朝雄総務長官)と述べている。また、近年も「元号の使用については、国民は元号西暦を自由に使分けていただいてもよい(中略)。公的機関の窓口業務での国民の元号使用はあくまで協力要請であり西暦で記入したものも受け付けられる」(二〇一九年四月三日、菅義偉内閣官房長官)と述べている。岸田政権においても、この立場は変わりないか。

回答:御指摘の答弁及び発言で示された政府の立場に変わりはない。

コメント:《現在の元号の根拠法である「元号法(1979年)」は一般国民に元号の使用を義務づけていないし、元号の使用を官公庁において義務づけた規定もない。国民は元号西暦を自由に使分け、公的機関の窓口業務での国民の元号使用はあくまで協力要請であり西暦で記入したものも受け付けられる》これが現在の政府の立場でもあるとはっきり認めている

 

二 日本年金機構の電子申請プログラムでは、「年」について「元号」でしか入力できない仕様になっている。二〇二〇年四月からは、資本金等の額が一億円を超える等の特定の法人の事業所が社会保険に関する一部の手続を行う場合には、電子申請の義務化が始まっている。

 公的機関への届書の電子申請において、元号でしか入力できず、西暦では入力できない仕様のものについて、政府として把握しているか。把握している限りのものを示されたい。

回答:御指摘の「日本年金機構の電子申請プログラム」の意味するところが必ずしも明らかではないが、仮に日本年金機構のウェブサイトからダウンロードできる「届書作成プログラム」(以下「届書作成プログラム」という。)を指すのであれば、届書作成プログラムにおいて「生年月日等の入力に際して、プルダウンメニュー」で西暦を選択できないこととなっていることは承知しているが、御指摘の「公的機関への届書の電子申請」の具体的に指し示す範囲及び「元号でしか入力できず、西暦では入力できない仕様のもの」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではなく、また、調査に膨大な作業を要すると考えられることから、お尋ねについてお答えすることは困難である。

コメント:《日本年金機構のウェブサイトからダウンロードできる「届書作成プログラム」において「生年月日等の入力に際して、プルダウンメニュー」で西暦を選択できないこととなっていることは承知している。》と事実を認めている。

 

三 公的機関への届書の電子申請において、元号でしか入力できず、西暦では入力できない仕様のものは、事実上の元号使用の強制であり、「一」に記した、当時の三原朝雄総務長官及び菅義偉内閣官房長官の答弁・表明に反するのではないか。

回答:御指摘の「公的機関への届書の電子申請」の具体的に指し示す範囲及び「元号でしか入力できず、西暦では入力できない仕様のもの」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではなく、また、お尋ねの「当時の三原朝雄総務長官及び菅義偉内閣官房長官の答弁・表明に反する」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

コメント:直前の質問二への回答で具体例として日本年金機構の「届書作成プログラム」ではプルダウンメニューで西暦を選択できないことを認めていながら、それが質問一への回答である政府の立場、「西暦で記入したものも受け付けられる」に反しているのではないか、というこの質問三に対しては、「具体的に意味するところが必ずしも明らかではなく」、「意味するところが明らかではないため」、「お答えすることは困難」、と回答回避の際使用される官僚用語集の常套句で逃げてしまっている。しかし、直前に日本年金機構の具体例を自ら提示しているので、いくら何でも、この回答回避の展開は苦しい。

 

四 公的機関への届書の電子申請プログラム作成に際して、「一」に記した、当時の三原朝雄総務長官及び菅義偉内閣官房長官の答弁・表明は、どう徹底されているのか。

回答:御指摘の「公的機関への届書の電子申請プログラム作成」の意味するところが必ずしも明らかではなく、また、お尋ねの「当時の三原朝雄総務長官及び菅義偉内閣官房長官の答弁・表明は、どう徹底」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

 

五 政府のこれまでの説明どおりに、元号・西暦にかかわらず電子申請できるようにするために、「二」に記した日本年金機構の電子申請プログラムも含め、今後どのような措置を取るか。

回答:御指摘の「政府のこれまでの説明どおりに、元号・西暦にかかわらず電子申請できるようにする」の意味するところが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、届書作成プログラムも含め、利便性の観点等を踏まえつつ、引き続き行政手続のオンライン化に取り組んでまいりたい。

コメント:「元号・西暦にかかわらず電子申請できるようにする」の意味がわからないということなので、具体的に、「入力画面で元号・西暦どちらでも入力できるようにすること」、といえば良いのだろうか。

 

六 世界には様々な紀年法(年の表記方法)があるが、元号は、不定期に数字をリセットしてしまうという特殊性を持っている。そのため、(一)元号では未来の年については確定表記できない、(二)元号と世界標準である西暦との換算には元号ごとに特殊な換算計算が必要である、という課題を抱えている。公文書における紀年法として、元号を用いている場合は、元号だけでなく、必ず西暦を含めるようにすべきではないか、政府の見解を問う。

回答:我が国では、元号が国民の日常生活において長年使用されて広く国民の間に定着し、法制化されていること、及び国・地方公共団体等の公的機関の事務については、従来から年の表示には原則として元号を使用することを慣行としてきており、西暦も便宜に応じて併用されてきていることから、政府として、御指摘のように「公文書における紀年法として、元号を用いている場合は、元号だけでなく、必ず西暦を含めるようにすべき」とは考えていない。

コメント:不定期にリセットされる元号と西暦が混用されている社会における問題を解決していこうという意志が行政には見られないのであれば、立法府でその解決策を議論しなければならないということを示している。
 すなわち、日本の「紀年法」はどうあるべきかという議論である。