公的機関の電子申請プログラムにおいて元号でしか入力できない場合、これは、「窓口で国民は元号/西暦を自由に使い分け、西暦で記入したものも受け付けられる」「元号使用は強制ではない」、という政府がこれまで一貫して述べてきた主張に違反している。
これが、日本共産党の宮本徹議員が5月22日に提出した質問主意書での主旨でした。5月31日の政府回答は、事実関係は認めたものの、それが政府の主張に反しているかどうかという肝心の判断については回避した文章でした。
その後、厚労省の担当者から宮本事務所に、説明したいという話しがあり、6月12日に会も同席して、説明を受けました。
全面改修、来年度実装を目指す
厚労省から2名、内閣府から2名、デジタル庁から1名が参加、会からも3名が参加しました。
翌日6月13日の「しんぶん赤旗」に記事が掲載されました。
説明によれば、現在は個別のパソコンにダウンロードしたソフトウェアを動かす形なのを、ブラウザー上で完結して動作する形に作り替える計画の中で、入力についても西暦入力を可能にするということです。
基本的には、ユーザーの使いやすさの向上のための作り替えの中で西暦入力も可能にする、という建付です。
現在、ベンダーからのヒヤリングなどを重ねており、来年度中の実装を目指すと言うことでした。
惰性が紀年法議論の不在を招いてきた
話し合いの中で、政府が2018年(予定された2019年の改元直前)に省庁間のデータは西暦で統一し、入出力場面で元号←→西暦変換をするという方針を(何の世論調査もパブコメも行わず、国会での議論もなく)決めていることを話題に上げたのですが、デジタル庁職員はその事を承知していなかったようなのでこちらから当時の新聞記事コピーを渡しました。
デジタル庁は新しくできた機関で中途採用、民間からの採用も多いと聞いていますが、元号問題について、行政が惰性で業務を行ってきたことも如実に示しています。
元号法が制定された1979年、まだ公的機関への申請と言えば「紙」での申請しか想定していなかった時代には、年表記について「昭和」とあらかじめ印刷されている書式であってさえも、申請者自身が「西暦」で記入すればいいのだから、強制ではない、という理屈も言えたのでしょう。そして「西暦」を使うのは申請者自身の考え方によるのであるから行政がどんな書式をつくろうと関係無い、という考え方が引き継がれてしまい、申請者が自由に記載できる紙の場合と違って電子申請の場合には、政府の主張である「元号使用は強制しないこと」を実装するためには、西暦での入力も可能になるように意識的に申請プログラムを作らなければならない、という当然のことが抜けてしまって、プログラム作成時の発注仕様に含まれることがなかった・・・、と考えられます。
一方、利用する「国民」の側も、元号法制定時にはあれほど議論された「元号使用は強制ではない」、という政府の言明について自覚的でなく、「元号」でしか入力できないことを不便だと感じつつも、この状態は変更可能だし、むしろ自分たちがそれについて議論し変更を発議しなければならない、という発想に至らず、ただ不満の反復と、「行政」あるいは「政治」を「自らの日常生活とは別の世界」のことだ、という認識に止まってきたのではないでしょうか。「世の中こういうもんなんだ」という風に。
厚労省の担当者は、年金機構への申請を日常的に行っている社会保険労務士の方々からの不満は特に聞いていないとおっしゃっていましたが、おそらくこういうことだろうと思います。
年金機構だけではない、内閣府は政府の主張が現場で実現されているか確認、指導する義務がある。