NHKに西暦表記を基本にするよう申し入れをおこないました。

2020年10月28日水曜日

運動 記者会見

 1027日、参議院議員会館内でNHKの担当者と面会し、以下の申し入れを行い、NHKの考え方を伺いました。

NHK会長 前田晃伸様

西暦表記を求める会

NHKの報道においては必ず西暦表記をいれてください。

私たちは、「西暦表記を求める会」といい、世界で唯一、不定期にリセットされてしまう「元号」を公文書内での年表示としている、立法・司法・行政の国家機関、地方自治体のあり方を変えさせたいと思って運動に立ち上がった市民グループです。すべての公文書には必ず西暦を記載することを求めて運動しています。

貴社の放送における元号と西暦の使い方について、視聴者として何点か疑問を感じていますので、以下の質問とお願いにお答えいただき、放送で使用する年号については視聴者が直感的にわかりやすい西暦表記を基本にするよう以下申し入れます。

1、貴社の番組作成に当たり、その中で使用する、西暦と元号の使い分けについて基準はありますか。あるとすればその内容を教えてください。

2、ニュースにおいても様々な出来事について、元号のみで表示・読み上げられるため、今から何年前のことか直感的に理解できません、わかりやすく伝える報道機関の本旨に沿った対応をお願いします。

3、あるニュース番組において数十年に亘るデータ変化のグラフを示した際、時間軸に「元号」を使用していた例がありました(添付資料参照)。視聴者へのわかりやすさから見てこのような時系列グラフの時間軸に途中でリセットされてしまう数字を使用するのは不適切です。今後はこのような場合、連続的な数字である西暦表記を必ず入れてください。

4、少なくとも海外事象に関する報道においては「元号」のみでの報道はなされず、むしろ「西暦」のみで放送されているように思われます。日本国内、海外、いずれも同じ年に起きている事柄ですので、共通の年表示で報道されるようにお願い致します。

以上ですが、よろしくお願いします。

なお、この申し入れについては弊会のブログに公開し、貴社からの回答も公開させていただきたいと存じますので御了承ください。

  この申し入れの中で紹介した ”数十年に亘るデータ変化のグラフを示した際、時間軸に「元号」を使用していた例” というのは、2019年12月25日朝7時のニュースの中での72年間に亘る出生数変化のグラフのことです。


このグラフは元々は厚労省が記者発表したもので、以下の様に西暦と元号が併記されたものでした。他の新聞などは連続性のある数字(西暦)で表示していましたから、あえて元号だけにしていたNHKに奇異を感じたのです。

令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の概況

 NHKの回答を要約すると、元号が国民生活に浸透しているという認識の元に、番組毎にその都度わかりやすさを考えて「元号」か「西暦」かもっともふさわしいものを個別に選んでいる、ということでした。個別判断はどのレベルで行っているのかという問には、ニュースであれば記者が書いたものを管理者がチェックしているという答えでした。個別ニュースについては把握していないし、答えられないが、指摘があったことは現場に伝えるとのことです。
 国内ニュースでもニュースソースが元号のもの(政府発表などのことだと思われます)は元号で、西暦の方が理解しやすいものは西暦を使用しており、内閣支持率の変化などは西暦で表記しているとのことでした。
 また、元号と西暦を併用した場合、「令和2年、2020年」と放送で読み上げるのは音として繁雑でわかりにくくなるのではないかという心配もあるとおっしゃっていました。(それならば多くの新聞と同じように原則西暦一本でいいのではないかともおもえますが。)

 会からは、例えば菅首相を紹介するのに、「昭和23年に秋田県で生まれ、昭和62年に横浜市会議員に初当選、平成8年に国会議員となり、令和2年に内閣総理大臣になりました。」と書いたら、字面は理解できますが、その時の年齢とか、私たちが普通の会話で暗黙の内に理解しようとしている情報は、換算表がないと得られず、やはり奇妙ではないのか、という事例も紹介しました。

 また、日本で生活する外国人が増加し、日本社会の構成要素になっている中で、合理的な説明ができないまま「郷に入っては郷に従え」とばかり「元号」の使用を課すのは、国際的に開かれていることが必要になるこれからの時代にふさわしくないことも、留学生に日常的に接してきた世話人から指摘しました。

 あるいは島原の乱を「寛永14年」に起きたという言い方では世界史の中で比較できないが、1637年に起きた、と言えば、デカルトの「方法序説」発表と同じ年であり、そこで起きた大虐殺の意味も世界史の中に位置付けられるようになる、という桑原武夫氏の旧著の記述も世話人から紹介されました。

 申し入れ書の他に、私たちの会のブログに掲載している資料集もお渡ししましたが、その中から、過去何十年にも亘って、国で使用する紀年法について自民党内を含めて西暦の採用も含めて検討する動きがあったことや、現在政府は電磁データについてはISOやJISに準拠して日付は西暦を使用したYYYY-MM-DDで統一することをすでに決定しており、今後地方へもそれを広げていこうとしていること、も紹介しました。(データを紙に印字するときにはわざわざ「元号」に変換するのだそうです。)

 NHK(日本放送協会)は「公共放送」として、様々に有用な情報を私たちに適供してくれていると思います。
 BS放送では、毎日世界各国の放送局のニュース番組を日本語に翻訳して放送している「ワールドニュース」や世界中で作られたドキュメントの放映、地上波でも語学学習や健康や科学の最新情報、福祉の当事者や障害者自身が登場する番組(EテレのハートネットTV、バリバラ)、社会の諸問題について映像の力で切り込んでくれる「NHKスペシャル」など様々な特集番組、それぞれの担当者の頑張りは充分伝わって来ます。

 私たちは、元号問題についてもNHKが特集番組を作ることを提案しました。元号は日本の伝統だからと言う立場の方、行政の立場の方、民間企業の立場、外国人の立場、日常生活の中での使われ方の状況、様々な意見を取材して、皆で考えていくのに役立つ、そのような番組を作っていただきたい、と。放送法第4条四は「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」としており、それにもあった番組ができるのではないか、と。

 今回の申し入れについて、NHKの立場は、参考としてご意見として受け止めさせて頂く、というものでしたが、視聴者にわかりやすくという観点はNHKも私たちも同じはずです。今後もNHKの対応を見守っていきます。

 申し入れの終了後、東京新聞の取材を受け、申し入れについて説明を行い、翌日10月28日の朝刊、特報欄に紹介していただきました。

 一つの国家の紀年法について、様々な矛盾や問題点を抱えながら、「慣行」「伝統」の一言で終わってしまい、しっかり議論することが出来なかったら、まさに「国家」を構成する者としての私たち自身が問われることになります。皆で下した合理的な判断で、新しい「日本」の「伝統」を作り上げていくべきだと考えます。