新型コロナワクチン接種、書式に見る西暦と元号

2021年6月13日日曜日

元号表記ピックアップ 行政 政府の対応

  始まっている新型コロナワクチン接種ですが、「予診票」などおそらく電算処理に関わる場合は「西暦」のみでの記入を指定、制度の説明などにおいては「元号」のみ表記にこだわる、という、相変わらず、混乱した対応が行われています。

厚労省のコロナワクチンページ の文面から(2021/06/13閲覧) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_00184.html

接種が受けられる時期
 接種を行う期間は、令和3年2月17日から令和4年2月末までの予定です 

対象者の条件表示は(2) 高齢者(令和3年度中に65歳に達する、昭和32年4月1日以前に生まれた方)

 一方、接種希望者が提出する予診表では、システムで使用する生年月日、接種日付はすべて西暦表記のみで記入させ、本人の署名というシステム管理には関係無い部分は、記入例としては元号を書いていました。もちろんその欄についても元号を予め記載してはいないし日付の年の記入方法は任意です。

予診票 
 https://www.mhlw.go.jp/content/000739379.pdf からダウンロードしたものから抜粋

生年月日 西暦のみ


医師記入欄 西暦のみ



自衛隊大規模接種会場案内Webでの予診票記入例 
https://drive.google.com/file/d/1oXsU55xhcXFgjOrV0khnYbKbMbyw0sm3/view?usp=sharing からダウンロードしたものから抜粋

 記入例として署名日付だけ元号で記載しています。





 1979年の元号法制定以来一貫した政府の元号使用についての主張は、

➀「国・地方公共団体等の公的機関の内部において事務の統一的な処理のため元号の使用を義務づけるような規則等は別として、国民又は国・地方公共団体等の公的機関に対し、一般に元号の使用を強制する法令は存在しないと考える」
➁「国・地方公共団体等の公的機関の事務については、従来から年の表示には原則として元号を使用することを慣行としてきている。したがつて、一般国民から公的機関への届出等においては、公務の統一的な処理のために、書類の年の表示には元号を用いるよう一般国民の協力を求めてきているが、このような考え方は今日においても変わりがない」

というものでした。

 要するに、「元号」と「西暦」の特性・違いについては全く具体的に議論しないようにしながら、「元号」使用を是とする思考停止状態を維持しようとしてきたわけです。

 しかし、今回のワクチン接種予診票のように、国民の大多数を対象に緊急に行わなくてはならない作業の場合には、「公務の統一的な処理のために、書類の年の表示には「元号」、ではなく、「西暦」を用いる」のが合理的であることを政府も自覚しているということでしょう。

 これまでも、
➀元号では海外では全く通用しないためにすべて西暦表記のみの「パスポート」
➁元号では未来の年を原理的に指し示せないために西暦表記にせざるを得なかった「住基カード・マイナンバーカード・運転免許証」等の有効期限
 という具体的な現実によって、「従来から年の表示には原則として元号を使用することを慣行としてきている」「公務の統一的な処理のために、書類の年の表示には元号を使用する」等という、現実から逃避した言い分の繰り返しが成立しないことは明らかでしたが。今回もその具体的なほころびが示されたことになります。
 今回の事例は、➂不定期にリセットされる元号は電算処理の内部では別の継続的な数値に変換して扱わざるを得ないことから、合理的な対応としてはそのような無駄で余計な処理ステップを人間にも機械にもさせないために「西暦」にせざるを得ないこと、を示しています。

 こうした元号と西暦との変換コストを日常的に支払わなくてはならない日本社会の現状を改善していくためには、まず、「慣行・伝統」と言った言い方で現実から目をそらし、思考停止に閉じこもるのではなく、本気で社会の紀年方法について議論していくことがどうしても必要です。