元号制定差止請求:元号違憲裁判

 長野県松本市の山根二郎弁護士らが、2019年3月27日に、「皇位の継承に伴い、元号法に基づいて国が政令で元号を制定することは、基本的人権として憲法13条が全ての国民に保障している人格権を侵害する」として、国を訴えました。

 国民は、連続した時間を尺度とする「世界史の時間」に自分の個人史の時間を重ねて生きているのであるが、元号の制定は、国民を「天皇在位の時間」の中に閉じ込めることによって、世界史と繋がっている「時間の連続性」の意識を切断してしまうことになる。これは憲法1 3条が基本的人権として保障する国民一人一人の「個人の尊厳」すなわち「人格権」を侵害するものであるから、同条に違反し許されない・・、という主張です。

 私たちが、元号、すなわち、ある特定の個人の状態によって不定期にリセットされ、原理的に未来の時間を指し示すこともできない、元号、によって(世界で唯一)日本という国家の行政が進められていることに感ずる、息苦しさ、異様さ、の根本を端的に言い表していると思います。
 
※この裁判は既に2019年5月31日、9月2日、11月18日に口頭弁論が行われました。
 2020年 2月17日の口頭弁論を経て、5月11日に判決の予定でしたが、コロナウイルスのため、判決は10月5日(月)14:00~ 東京地裁103号大法廷、に延期となりました。

追記
※地裁及び上級裁判所での判決内容は「却下」でした。

 「行政事件裁判例集」に地裁判決文が掲載されています。

要旨 
1 元号を「令和」に改める政令(平成31年政令第143号)の制定行為は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。
2 元号法の施行に伴う戸籍事務の取扱いについて定めた通達(昭和54年6月9日付け法務省民二第3313号通達)の発出行為は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。

以下の様な理屈でした。
この訴えは「処分」の無効等の確認を求めるものであるから,その対象となる行為は「処分」であることが必要である。ここにいう「処分」とは,公権力の主体である国又は公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうと解される。本件政令は,元号を令和に改めるというものにすぎず,「直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定するような規定はない」から、そもそも「処分」ではない。だからその「無効」を求める事もできない。